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今月の仏教俳句歳時記

いうぜんとして山を見るかはずかな 〔一 茶〕

 陶淵明(とうえんめい)に「悠然見南山(悠然として南山を見る)」という有名な詩句があります。これをもじって、じっと上の方を見ている蛙を表現したのでしょう。
 悠然と山を見ているような表情の蛙には、どこか仙人の風貌すら感じられます。蛙の気持ちになって世界を見ると、山や空はどう見えるのでしょう。
 「かれ(蛙)はぽつかりと空を覗き見ながら、まだ青空であることに失望をかんじたかどうかは知らない。たゞかれが覗き見たとき広大なる地球には何の異変はなかつたが、既に遠い山々には雨脚がみだれてゐることを感じた。そのためか、蛙はしばらく水面で凝乎(じっ)としてゐた。……片足を川骨の茎にしがみつかせたまゝ、かれは何事もない身の平安を感じてゐたらしかつた」(室生犀星「蛙」)
 小さな生物の目で、物を見るのも面白いことです。      

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