今月の仏教俳句歳時記

花冷に阿修羅の三面眉根寄す 横山房子

 桜の咲くころでも急に冷え込んだりする日がありますが、それを花冷えといいます。その時期に奈良・興福寺の三面六臂の阿修羅像(国宝)を見ての感想を述べたものです。
 阿修羅は、インド神話では軍神で忿怒の相が多いわけですが、興福寺の阿修羅像には怒りの表情がありません。作家の堀辰雄はこの像を見た印象を、
「六本の腕を一ぱいに拡げながら、何処か遥かなところを、何かをこらえているような表情で、一心になって見入っている阿修羅王の前に立ち止まっていた。なんというういういしい、しかも切ない目ざしだろう」(「大和路・信濃路」)と書いています。
 確かに阿修羅の少し眉根を寄せた顔は、「何かをこらえているような、切ないまなざし」として、見る人を立ち止まらせるものがあります。

     

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