密教動物記

価格(税込)
4,104

編著
羽田 守快(著)
体裁
四六変形判、上製本、272頁
ISBN
978-4-88414-171-4
発行日
2015年06月
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本書について

 動物たちは菩薩である・・・
 無類の動物好きとして知られる著者が行者としてのシンプルな生き方を動物たちの生態に学び、動物たちと密教諸尊との隠された関係に加持祈祷の本質を読み解く。
 採りあげた動物は29種、諸尊との関係や如何に?

「はじめに」より

 仏の戒律では仏寺で鳥や動物などを飼うことは本来許されないとされる。しかし、動物と共に暮らすこと自体は決して意味のないことではないと私は考えている。人や書物から学べること以上のものを、彼らから教えられ学んできたからである。地球上で共に生きるものとしての動物たちの在り方に感動することがなければ、「エコロジー」も積極的な生き方の指針とはならず、単に現代人の浮薄なポリシーとして認識されるのみだと思うのだ。 
 マザーテレサは「愛情」の反対は憎しみではなく、実は「無関心」なのだと教えている。まさにそうだ。だからこそ生き物たちにもっと関心を持ってほしいと思うのである。それによって生命というものの本質を知ることができ、自然の不可思議性の中に潜む素晴らしい何か、言うならば、より良く生きるためのシンプルな智慧を、きっと見つけることができるにちがいない。

本書の目次内容

常随魔…ゾウ/極楽に啼く…オウム/生死の大海・涅槃の岸…水牛/招かれざる神使…ムカデ/星を喰らう獅子たち…ライオン/放生会のスター…亀/不思議なお盆の客たち…蛾/恐怖する者たち…猿/カラフルな貧乏神…ヒキガエル/同行二人…犬/愚かさを喰らう…馬/レ・ミゼラブル…狐/古き恩人…カラス/仲間外れ…猫/ホナリーに遊ぶ…ワニ/見事なる討死…兎/真言の王と女嫌い…孔雀/変成男子…リュウグウノツカイ/大淫女…鹿/ワルキューレ作戦…サンゴ・シャコガイ/お受験…鰻/星獣大決戦…カニ・サソリ・マカラ/ノロノロと…牛/引っ越し貧乏…タヌキ/福の神来たる!…ネズミ/怒りこそ…ヘビ/悪魔との握手…ワシ/顔…オオカミ/ポケモン…トラ

本文の一部をご紹介(文章を省略・要約しています)

《ゾウ》歓喜天
 これらの神々もまた、いわゆる「常随魔」なのだが、彼らは我々が生まれてから死ぬまでの間、ずっと付き従ってくれる「善なる常随魔」なのだ。聖天は他の天部に較べて、より我々に近い存在だというが、これらの「善なる常随魔」である神々が我々の本能的な智慧を表しているとすれば、それもうなずける道理である。だからこそ、往々にして格別の霊験も現れるのだ。
 古来、聖天さんを信仰していることは秘密にしなくてはいけないといわれてきた。昨今では聖天信仰自体をかくすことはないようだが、しかし、昔から耳打ちされてきたように、聖天から頂いたご利益についてはあまり吹聴しない方がいい、というのはどうも本当のようである。
 どんなにご利益があっても、御礼の祈祷だけはしっかり行い、その内容については多くを語らない。それが聖天の利益を永く保つ一つの秘訣だと、私も思っている。「秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず」と世阿弥の言葉にあるが如く、秘に始まり密に終わってこそ、聖天につながる我々の意識下の智慧の世界はさらに活性化するのだから。

《水牛》大威徳
 大威徳明王の水牛の話に戻るが、密教的な考え方では、聖と俗の世界を行き来するのは「菩提心」なのである。だから仏の使いとなる事の多い水陸両生の蛇や亀にも、青い水牛と同じメッセージが託されていると考えるべきだろう。大威徳明王は魔障調伏の仏だが、なかでも殊に悪人を退散せしめる人魔調伏の誓願を持つ。したがってこれを拝めば、かの青い水牛が調伏の対象となる相手の無意識の世界に馳はせ参じて、その鋭い角を振るのだろう。私は調伏などを依頼されても修法はしないが、以前、どうしてもこれを行わなければいけない事情に立ち至ったことがあって、やむなく修したことがある。 
 調伏祈祷というものは、自分がダメージを受けるのは御免こうむりたい、といった程度の気持で軽々しくすべきものではない。これはとても重要なことだ。なんとなれば、それでこそ、仏の深い慈悲を背景にしなくてはならない、ということを痛切に感じることができるからである。